――今の西崎さんでは持ってないかもしれないモノ、俺は確実に持ってる。
――両手で抱えきれないぐらいに。
そう言った福嶋くんが、
ほんの一瞬だけ見せた切ない表情に、
なぜか胸の奥が鈍く疼いた。
「…なんてな」
最後は冗談めかして言って福嶋くんはコンビニの袋をガサガサあさった。
「ほら」
「ひゃあっ!?」
いきなり頬に冷たいモノを押し付けられた。
それが手のなかに落とされる。
「…何かと思ったら」
「ほんとは焼肉食いながら飲みたかったんだけど車だったしな」
そう言って福嶋くんは冷えた缶ビールのプルタブを開けた。
「福嶋くんって意外と法律守る人なんだね」
「あ? だからさっきから合意の上じゃねーとシねーつってんじゃん」
バカかお前、と吐き捨てて福嶋くんはごくごくと喉にビールを流し込んだ。
「バッ、バカ//// そ、そっちの話じゃないもん//// ってか福嶋くんが飲んだらあたしどーやって帰るのよ!」
自分の車はお店に置いてきたままだし、
福嶋くん家けっこう大通りから中に入ったところにあるからタクシーなんかつかまらないし、
街灯もあまりなかったから1人で帰るには怖いし。
ぶつくさ文句を言ってると、ふと頬に大きな手が触れた。
顔をあげると、福嶋くんの真剣な瞳と視線がぶつかった。
「だから今日は帰さねーつったじゃん。
――おまえが胸につかえてること、洗いざらい話すまで」

![Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.778/img/book/genre1.png)
