「…ああ、今日風邪で寝込んでたからさ、携帯鳴ってんのも気づかなかった。…ああ、もうだいぶいい。…あーいいよ、適当になんかあるモン食うから。…ああ、飲んだ飲んだ。…ああ、分かってるよ。…うん、大丈夫だから」



西崎さんが電話をしながらちらっと横目であたしを窺った。



ずっと西崎さんの電話してる後ろ姿を見ていたあたしは、目が合ったことが途端に恥ずかしくなって慌てて視線を外した。



「…悪い菜月、いまお客さん来てるから。…は? そんなのどっちでもいいだろ。…あーもー分かったから。後でまたかけ直す。…はいはい」



西崎さんは疲れ果てたように肩を落として電話を切った。



「どなたか来られるんですか? でしたらあたし…」



帰ろうと腰を浮かせると西崎さんに引き止められた。



さっきの電話は幼なじみで、物分かりの悪いヤツじゃないから、お客さんがいると分かってて強引に押しかけては来ないだろうって。



「正直あいつといるより村瀬といるほうが落ち着くから。風邪の治りが早いかもな(笑)」



「そそそそんな////」



あたしといるほうが落ち着くなんて。



お世辞でも嬉しいんですけど――