あたしの必死な訴えが届いたのか、
西崎さんが緊張がとけたようにふっと柔らかい笑みをこぼした。



「…拭っていい?」



「…え」



「…涙。」



「…」



「…」



2人のあいだにほんのちょっと舞い降りた沈黙。



西崎さんのあったかい瞳を見つめていたら無意識のうちに小さくうなずいていた。



ふたたびあたしに向かって伸びてくる西崎さんの大きな手。



あたしの頬に触れる寸前で、西崎さんはさりげなく、さっき離れた間合いを詰めた。



まだ熱っぽいことを証明しているかのように熱い指先がそっと頬に触れ、目の下を掬うように涙を拭われる。



西崎さんのその優しい指先と穏やかな眼差しに、さっきまで荒れ狂っていた胸が、静かに凪いでいった…





「……大丈夫か?」



「……はい」



あたしの言葉に、西崎さんは優しく目を細める。



「お前に一から教えられる男は幸せ者だな」



そう言って、ぽんぽんとあたしの頭を軽く叩いた。










――あたしに、一から教えてくれる人…





その人が…





あたしは…





目の前にいるあなただったら…





最高に幸せです―――…












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