『アタシが何で、いちいち恋の報告を慧ちゃんにしてるか分かる?

慧ちゃんに気にかけてもらいたいからだよ?

ちょっとでも妬いてもらえないかなって期待してるからだよ?』





『アタシ今までに何度も何度も慧ちゃんへの気持ち封印しようって努力してきたの。

そのために慧ちゃん以外の人と何人も付き合ってきた。中には本気で幸せになりたいって思った恋もあった。

だけど……

だけど結局…ぜんぶ虚しかった。



…目を見て話す相手も、笑いかける相手も、その手で触れてほしい相手も、いつも慧ちゃんだったらって、ずっと思ってた』







――あの日ですら涙を見せなかった菜月が、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら語った本心。





――今日初めて…菜月の気持ちを知った。









「…菜月」



小さな寝息を立てている菜月の頭をそっと撫でる。





ごめんな…?



お前の気持ちに気づいてやれなくて…





でも俺は…



お前の気持ちには答えることができない…



お前も分かってるだろう?








俺が…お前に相応しくない男だってこと――…










次章≫≫≫初恋の記憶