「よし、行くか?」



「はい」



あたしは社員のコたちに『あとよろしくね』と言って西崎さんと店を出た。



「乗って」



駐車場に停めてあったブルーメタリックのスポーツワゴンに乗り込む。



車内は香気が満ちていた。



西崎さんの香水の匂いだ。



さわやかなグリーンノートの匂い。



懐かしい匂いに酔いしれそうになったのをこらえて『お邪魔します』と一言言った。



「どうぞ」



慣れた動作で運転席に座った西崎さん。



自分の車なんだから慣れているのは当然なんだけど、その慣れている動作でさえ非の打ち所がないんだよね。



ほんと…罪な人だよ。



些細な仕草や動作だけで女の子を夢中にさせるんだもん。