「だって向こうはいま配達担当の人がギックリ腰になっちゃって、ほかに男の子って言ったら…」



――バタンっ



そのとき搬入口の大きな扉が開かれる。



「すみませんっ…村瀬さんっ」



見るからにひ弱そうな“もやしっ子”がカモシカみたいな細い足ですっ飛んできた。



…何だコイツ、…男か? 女か?



身長はおそらく160センチもない。ナチュラルパーマに中性的な顔立ち、よく通る高い声。



「誰だおまえ?」



「あ、ボク宮下といいますっ。この度はご面倒をおかけしてどうもすみませんでしたっ」



ボク? …男なのかコイツ。



宮下と名乗った男は俺たちにガバっと頭を下げた。



ちらりと横目で村瀬を見ると首を小さく振りながら『あんまり怒るな』というふうに睨みを効かしてきた。






――コイツか、このクソ忙しいときに駆り出される要因をつくった張本人は。