「ミサは自分が悲しい思いをしたのに、他人にも同じような気持ちを味あわせてる」


僕が言うと、本は俯いたまま頷いた。


床には本が流した涙の水溜りができ始めていた。


「でも、お前は優しいな」


僕は慰めるつもりでそう言った。


本は驚いたように顔を上げる。


「俺が……優しい?」


「あぁ。持ち主に捨てられて魂だけになったのに、まだ持ち主の事を心配してたんだろ? 僕に初めて会った時からかなり挙動不審だったし」


「それは……物にとって持ち主との思い出は永遠の幸せだから……」


本は鼻をすすりあげる。