そう言って手の中に本を納めると、本は俯いてしまった。


「なにをそんなに怯えたり落ち込んだりしてるんだ?」


ミミの事を思い出して、僕はそう聞いた。


言葉を使えるのだから、ちゃんと相手の意見を聞くべきだ。


それを忘れたわけじゃなかった。


「ごめんなさい」


本が消え入りそうな声でそう言った。


「お前、僕になにか悪いことをしたのか?」


「違う。俺はなにもしてない。でも……」


本はそこまで言って、僕の顔を見上げた。


その切なそうな表情に胸が痛くなった。


本は知っているんだ。