持ち主の名前を思わず言ってしまった本は、逃げようともせず部屋で大人しく眠っていた。


僕は眠っている本を横目に見て寝返りをうった。


昼間散々うつらうつらしていたせいか、夜になると目が覚めてしまっていた。


「結局、僕はどこへ行っても逃げられないんだ」


小さな声でそう呟いた。


愛菜にミサ。


僕が思い出したくない人間の物ばかりが、僕の周りに集まって来る。


このままこの町にいれば、もっと沢山の物が集まって来るかもしれない。


そう考えると背筋が寒くなる思いだった。