僕が声をかけると、影が動いて岩の横からウサギの耳が飛び出した。


こちらをそっとのぞき見しているようだけど、長い耳は隠しきれていない。


雨の中歩き回ったせいで、その耳はまた黒く汚れていた。


「そんなに汚れて……。出ておいで」


僕がそう言うと、影はそっと姿を見せた。


それは間違いなくミミだった。


「なんで1人でこんな場所に来たんだよ。蛇女がいたら危ないだろ?」


僕はミミの手を掴み、そう言った。


「ごめんなさい……」