抱き合ってわんわん泣くあたしたちを、龍毅と僚は黙って見ていた。何も話していないし、ジュリアのことだって知っているだろう。テレビで見た時もあたしは何も言わなかった。彼らに、いったい何から話したらいいんだろう…

『アイナ、久しぶりに会ってもっと再会を喜びたいんだけど、話さなきゃいけないことがたくさんあるのよ…。その前に、彼らは今の仲間なの?』
ジュリアは龍毅たちを見てそう言った。龍毅はポカンとしているから英語はわからないんだろう。僚はどうかな、わかってるかもしれないな…

『……そうだよ。とても大切な人たちなの』
『……』
あたしの答えに、少し不満気だ。“大切な人たち”というのは素直な気持ち。それを偽ってもいいことにはならないだろう。ジュリアやエド達だけがあたしの世界の全てだったあのころとは違う。龍毅も、僚も、悠唏も理流も舜くんも…鳳狼のみんなはあたしの大切な人たちだ。
『あなたの話もゆっくり聞きたいわ。でも、先に私の話をしてもいいかしら』
『うん。』
チラリとジュリアが二人に視線を向ける。ジュリアが話をするには、邪魔だということだろう。二人には帰ってもらわないと…

「龍毅、僚、何も説明しなくてごめんね。ジュリアはアメリカにいた時の友達なの。二人だけでゆっくり話をしたいから、今日は帰ってもらえる?」
「…別にいいけどよ」
「…俺たちにも、今度話を聞かせてくれる?」
「うん。みんなにちゃんと話すよ…心の準備に時間がかかるかもしれないけど」
「……わかった。悠唏にも言っておくね。家から出るときは、できれば連絡してほしいな」
「わかった」

二人は潔く立ち上がるとそのまま出ていくようだった、玄関まで見送れば、龍毅が振り返って見下ろしてくる。何か言いたげ。なにかな、ジュリアのサインとか?好きだって言ってたよね、前に

「……あんま泣いてっとウサギになっちまうぞ」
「え…?」
「せっかくの顔がブスになっちまうからあんま泣きすぎんなよ。じゃあな」
「え、うん…?」
龍毅は乱暴にあたしの頭をかき混ぜると、さっさと出て行ってしまった。な、なんだったの…?

「はは、あれでも心配してるんだよ。藍那ちゃんの泣き顔に弱いんだ。あんまり、ため込みすぎないようにね」
「あれ、心配してたの?」
「たぶんね」
「…龍毅ってほんとわかりにくいよね」
「そうだね。でもいい奴だよ」
「それは知ってる」
くすくすと笑ってしまった。僚も笑っている。
「それじゃあ、何かあったら連絡してね」
悠唏には適当に言っとくよ、と言って僚も出て行った。
ありがとう、二人とも。沈み切った気持ちが少しだけ紛れたよ。おかげでちゃんとジュリアに向き合うことができそうだ。