「ヤベえと思ったらギブアップしろよ~」
気を遣ってくれているのかいないのか,龍毅がにやにやしながら言っていた。
ギブアップ…うん。まあ多分みんなの様子は今まで見てきたけど,このくらいなら大丈夫なんじゃないかな。
「始め!」
僚の合図で対峙していた相手が素早く動いた。
躊躇なく間合いを詰められて驚く。それに動きも早いし,伸びてきた手を避けたらそのまま死角に体が揺れて,一瞬戸惑った。
「っ,」
背後から腕を捕まえられる。ギリッと掴まれて痛いけど…背後からでこの程度なら力なんかなくてもイケる。
ガッ!ゴッ!効果音を付けるならこんな感じだろうか。
「うっ!」
「うわ,鳩尾うまいこといったな」
「そのまま裏拳…」
「腹抱えた相手に回し蹴り…」
「あ,藍那ちゃん圧勝~…」
あたしの方が体が小さい分相手の急所に潜り込むのが簡単。体重移動のまま回し蹴りをするのはエドが「簡単だから覚えとけ」って言って教えてくれたあたしの十八番。
ふう,と一息ついたあたしを見て楽しそうな僚はアッサリとこう言った。
「じゃあ次,敵が複数の想定で行こうか」
「は?」
まだやるの?
先ほどと同じく理流が適当に何人か連れてきた。え,二人とかじゃなくて4人なの?これに抵抗できたらあたし攫われる心配なんかないんだけど。
「4対1とかやる必要ある!?そんな状況だったら抵抗なんてできないよ!」
「大丈夫,一気にじゃなくて順番に次々行くだけだから。もちろん様子を見ながら判断してもらうけどね」
まさかさっき理流がこの人たちにこそこそ話していたのはその指示をするため…?どんだけ気合い入れてあたしに喧嘩させる気なんだよ!てか4人もいたら護身じゃなくて喧嘩だからね!
「藍那ちゃん,わりーけどよろしくな」
「えええ…」
もちろんメンバーとは顔見知りだから,さっきの人もそうだけどこの人たちだって日ごろ仲良くしてる人だ。
「幹部に頼まれたら断れねえし,俺たちもさっきの見て藍那ちゃんがどんだけやんのか面白くなってるから」
「面白くなんかないよ!」
こいつら…!血の気が多いやつってなんでこうなんだろうね!巻き込まないでよ!
「じゃあ,はじめ!」
またも僚の合図で4人が一斉に動いた。



