「エド,いつまでそうしているの?」

「…」

「アイナを取り戻さなくていいの?」

「…」

「アイナはエドから逃げたんじゃないと思うよ」

「…何が分かる」

「エドを失うのが怖かったんじゃないかな」


あの時エドは,死にそうだった。
アイナから見ればそれはアイナのせいで,エドはアイナを守るために撃たれた。
…そんな状況だったら。自分がもしそうなら。目の前で大切な人を失う恐怖を味わうくらいなら,そんなことを知らなくていいように何も情報が入らない遠い土地へ逃げてしまいたくもなる。

ましてや,アイナは俺たちみたいに覚悟なんてしていない。毎日楽しく過ごしていただけ。
物心ついた時から特殊な環境に身を置いていたエドや俺とは違う。


「…逃げられたからって,諦めるの?」

「あ?」

「今のエドはそういうことでしょ。アイナが逃げたから,傷ついて弱って引きこもってるだけ」

「…うるせえ」

「なんとしてでも手に入れるっていう強い意志はないわけ?そんなだから連れ去られてアイナを傷つけちゃったんじゃないの?」


聞く気はない,とでもいうようにエドは隣の部屋へ行ってしまった。


「ねえ!俺らは探すよ!ジュリアはモデルとして顔を売って日本にまでアピールするし,リンとティルは日本の情報さらってるよ!エドは何もしないの!?」

「ほっとけつってんだろ!」




思っていたよりも,エドが意地を張る。

ちょっと煽れば行動を起こすかと思っていたのに…。




「…期待外れだ,俺の知ってるエドはそんなんじゃなかった」

「…」

「影の俺が,取って代わってもいいの?」



…俺は,エドなんだから,エドがアイナを好きになるように,俺だってアイナが好きだよ。




「エドが何もしないなら,文句も聞かないからね」




ここまで言っても,エドは部屋から出てこなかった。