「ついたぞ」


以前あたしが入院したこともある小さな病院。十何台かのバイクがズラッと並んでいるから鳳狼の人が結構いるんだろうと思う。そんなにみんな怪我したの…?



「…あれだな,おめーマジで胸ねえな」

「は!?」

「後ろにいんのはちっせー男かと思ったぜ」



何なの急に!?胸!?



「おめー実は男なんじゃね?」

「なんなの!?」

「龍毅!」



急な龍毅の暴言に驚いていると理流が龍毅を叩いた。


「ごめんね藍那ちゃん,コイツ多分気ぃ使っただけだから」


半笑いでそういわれたけど,気を遣った!?どこが!?


「急にめちゃくちゃ悪口言われたんだけど!」

「おめーがめちゃくちゃ不安そうな顔してっからだろ」

「関係なくない!?」



あたしの不安を飛ばすために胸がないことを言ってきたってことなの?嫌味でしかないじゃん!



「これは今から育つんだし!」

「いーや,無理だな」

「何が分かるの!!!!!」


むかつく!腹立つ!なんなのほんとに!



「龍毅!……藍那ちゃん,気にしないでね。さ,悠唏んとこ行こ」


理流!この馬鹿のこともっと叱ってやってよ!

にやにやしながらこっち見てんじゃねーよ!!




龍毅にものすごく腹を立てていたら,モモにも「気にすんな」って言われた。

胸がないことは気にしてないもん!龍毅が失礼なことに腹を立ててるんだから!


いろいろ言ってもわかってもらえない気がして諦めた。くっそ!龍毅め!




病院内に入ると,そんなあたしを置いて龍毅と理流はスタスタと行ってしまった。歩くの速すぎ。



「お二人も総長のこと気になるんだろうな」

「だから急いで行ったの?」

「たぶんね」

「悠唏,そんなにヤバいの?」

「目の上になんか当たったみたい。目は見えるらしいから大丈夫だとは思うけど,たぶん何針か縫うんじゃないかな」

「やばいじゃんか!」



目の上を縫うなんて!


「急いで行こ!」



焦って治療室だか病室だかに向かった。