*藍那*
ただ待つだけは,苦手だ。だけどあたしが出て行ってしまったら余計な心配や事件を起こしてしまうかもしれないからおとなしくしていよう。
家の中はとっても静かで,下で作業するお手伝いさんの物音しか聞こえない。
ママやパパもあたしのいないタイミングで帰ってきているんだろうか…それとも全然帰ってきてないのかな。
ずっと鳳狼にいると人に囲まれているから,こんなに長い時間一人で静かな空間にいるのは久しぶりだった。
……今日は,紫蛇と抗争している。
倉庫には武器も置いてあったし,きっとあれを使うんだろうな。
去年昂太に聞いた時には「武器は使わない」って言ってたのに。紫蛇が相手だとそういうわけにもいかないんだろうか。
さすがに鳳狼が一方的に卑怯な手を使ってるとは考えたくなくて,そうこじつけた。
「武器,なんかね……」
人がたくさん傷つくだけだ。
何かを守るためには仕方がないなんて,思いたくはない。
理解はできるしあたしはいつも守られてばかりだからそれを否定しちゃいけないのかもしれないけど,誰も傷つかないならそれが一番のはずだと思ってる。
どうしようも,ないんだろうけど
夕方に紫蛇の本拠地に乗り込むと言っていたから,そろそろ終わるころだろうか。
日が沈んで真っ暗になる直前の空を見上げてそう思った。



