ヒュッ

「ッ!」


素早く俺のほほをかすめたのは,サバイバルナイフ。

なんか出してくるとは思ったが,予想通りかよ。


「殺してやる!」

「死ぬかよ」


コイツが殺す気で向かってくるというなら,俺だってそうだ。殺す気でいってやる。

「フラフラじゃねえか…殺すんじゃなかったのか?」

「クソックソ!」

ナイフを振り回してはいるが,一向に当たらない。筋が分かりやすすぎて避けなくても当たらない気もする。


「…そんなもんかよ」

「……っ」

フラつく倉本を冷ややかに見ていたら,ヤツがにやりと笑った。

なんだ…?




「悠唏さん!!後ろ!」

部屋の入り口にいたやつの声に,後ろを振り向こうとすると

バキッ!!


「ッ!!!!!」

いてえ!!!!クソ!!!




何かで殴られたのだろう,すさまじい衝撃で目の前がチカチカと光った。


「ハハハハハ!!ざまぁねえな瀧沢ァ!」

「クソ…」


「悠唏さん!」


運悪く,目の上に当たってしまったらしい。

血が流れて右目が開けられねえ。


俺を殴ったらしい奴はすぐに鳳狼のメンバーにボコボコにされて伸びた。こいつ確か,倉本の右腕の副総長…



動きの止まった俺に向かって倉本がナイフを振り上げる。

やられて…たまるかよ!


向かってきたナイフをぎりぎりで避け,倉本の腕をつかむ。

そしてそのままやつの鳩尾を殴り上げた。



「ウッ……」



うまい具合に鳩尾に入った。そのまま倉本はうずくまる。









「悠唏!」


下が終わったのか?

龍毅の声が聞こえた。




「これで終わりだ。もう紫蛇の好きにはさせねえ」


腹を抱えてこちらを睨みつける倉本に回し蹴りを決めると,ヤツは気を失った。