倉庫にやってきたのは元紫蛇のメンバー8人。そのうちの2人は舌に無理やりピアスを開けられたらしく,話すこともできない状態だった。しかも一気に4つ…?ふさがるのか?

耳に開けるのすら痛かった俺はピアスは多くない。龍毅は舌にも開けようかとか言ってたな…
その龍毅も4つ開いたその様子にはドン引きしていた。

倉本あいつ,悪魔か。


「抜けてえやつらは何人かいるんだ。でも,総長の…倉本の出す条件がな…」


薬を打つことを強制されたり,こうしてピアスを開けさせられたり,抜けてえやつら同士で喧嘩をさせられたヤツらもいたらしい。


「倉本の望みは瀧沢を殺すことだ。それなのに関係ねえところまで被害が出てる。俺は確かに自分の意志で紫蛇に入ったけど…そんなことするために入ったわけじゃねえ」


僚が調べて得た情報はどうやら確かに正しかったらしい。

見境なく喧嘩,気に入らないことがあったら女だろうと暴力,恐喝,薬を撒いてるかは知らないらしいが,抜けるための条件として持ち出してくるくらいだから倉本が絡んでない可能性はほぼゼロだろう。


「鳳狼と一緒になって紫蛇に喧嘩を売る気はねえが,いまの紫蛇は腐ってる。あそこを庇う気にもならねえよ…だからこうしてここへ来た」


中心になって状況を説明していたそいつは苦虫を噛みつぶしたような顔でそう言った。

そうだろう,この辺りでチームに入ろうと考えて紫蛇を選ぶなんて,“鳳狼が嫌い”という理由でがほとんどだろう。

去年の事件までなら紫蛇にも何か魅力があったのかもな…想像もつかねえけど。



「口には出してねえけど抜けたいと思ってるやつらも,何か倉本から指示されているかもしれない。昨日俺たちの前にひとり来たんだ,“抜けていったやつ全員殺してこいって指示されたから,逃げてくれって言いに来た”と言われてな…そんなのもう,見たくも聞きたくもねえんだ」



だから,一刻も早くあれを解体させてくれ,と8人がそろって頭を下げた。

そうだな…



「俺たちも,そうしようと言ってたところだ」


やはり,やるしかない。











「予告してから行くか?」

「意味がないかもね…そんなことになってるくらいだから紫蛇はいつでもやれるように用意してると思うよ」

「だな…俺もそう思うぞ,僚」

「じゃあ奇襲だな!」

「決行日は?」

「来週…?」

「いや,次の金曜だ」


実行に関しての会議をさっそく行った。僚の言う通り,予告を出してやる必要はないだろう。ああして元メンバーがうちに顔出したことだし,いつでもやる気なはずだ。


それに被害は最小限にしなければならない。来週なんかに先伸ばすわけにはいかない。さっさと潰さなければ。



「早急に準備を整えろ」


紫蛇相手に丸腰で行くなっていう義理を通す必要はない。あちらはどうせできる限りの策を用意してくるだろう。


「…紫蛇の規模も具体的にはわからないのに,本当にいいの?」

「ぜってえ負けねえ。どんな手を使ってでも倉本を潰す」

「…」


抜けるったって,仲間を殺そうとするやつだ。死んでも潰す。

去年あのまま殺してしまえば良かったかもしれないと思いながら,覚悟を決めた。


運命の日は,金曜。