どうやら、この事態に主任が悠斗さんを呼んでくれたようだ。
私は、感謝の会釈をして悠斗さんに向き直ると返事をした。
「はい、ちょうど社食に行こうかと思ってました」
そう言うと、悠斗さんはニッコリ笑って告げた。
「今日は専務室に行こう。専務が結婚祝いにと松花堂弁当取ってくれたから、迎えに来たよ」
え?それ本当に?
驚いていると、悠斗さんはこともなげに言った。
「ほら、麻里花から聞いてお祝いだって」
なるほどね。
昨日は麻里花もいたし、そこから昨日無事入籍したことも聞いたのだろう。
悠斗さんは秘書だからいいとしても、私は一般社員なんだけどな。
専務室に行くなんてちょっと気が重い。
そんな私の表情の変化を見て、悠斗さんはクスッと笑うと言った。
「麻里花も一緒だから、気負わずおいでって。専務からの伝言」
その言葉にホッとすると、寺川主任が一声掛けてくれた。
「三十分昼延長していいからね!部長と課長には言っておくから」
こうして、私は送り出されて本日専務室にてお昼休憩をとることになった。
休まる気は皆無である。
諦めつつ、私は悠斗さんに連れられて専務室へとお邪魔したのだった。
専務室は本屋ビルの上階にある。
眺めは抜群で、その室内はその地位に見あった重厚なデスクやソファーセットの置かれた空間だった。
そのソファーに麻里花はちょこんと座っていてその隣には専務。
向かいに私と悠斗さんが座ってお昼となった。
豪華な松花堂弁当だったけど、正直緊張し過ぎで味わうことは出来なかった。
ちょっと残念だったのは、秘密である。



