この騒ぎに庶務課内はじっと見守り姿勢だ。
課長がいれば諌めてくれたかもしれないが、現在社内会議中で離席状態。
総務部長も然りなので、いまこの暴走を止められる人が居ないのである。

「いつご覧になったんですか?」

とりあえず、聞いてみることにした。

「昨日、一緒にいたでしょう!手を繋いで歩いてるのを見たわ!抜け駆けなんて、卑しいわね」

うん、別に卑しくもなんともないけどね。
お付き合いしてるっていうか、昨日結婚しているし。
夫婦ならなんら問題ないでしょうよ。
内心そう言っているが、まだ公表していないのでどうしたものかと思案してしまう。

直ぐに何も言わない私にイライラし出す先輩。

「あなたみたいな子は泉さんに不釣り合いよ!さっさと別れて!」

実に勝手気ままなことを言ってくる先輩にどうしたものかと思ったら、後方から声が飛んできた。

「あら、宮園さん。なにをおかしなことを言ってるのかしら?あなたおかしいんじゃない?」

そう声を出してきたのは今朝手続きをお願いした寺川主任だった。

「寺川さん、これは彼女に私が話してるので」

さすがに自分より上の先輩には強気にはならないようだが、話を聞く気はないようだ。

「いえ、だから聞いててあなたの主張がおかしいわよって言ってるの」

やっと主任の言葉に宮園さんが気づいたのか顔を顰めて主任に聞いた。

「なにがおかしいんです?」

そうして主任が私に変わって言った。

「だって、泉さんと金山さんは一緒にいるのが普通よ?だって結婚した夫婦ですもの」

こうして、私と悠斗さんの結婚は本人達の口ではなく面倒な先輩によって引き出されることになった。