顔合わせからの入籍の翌日はお盆明けの仕事初日。
私は、婚姻届受理証明書と今朝早くに住民票を取り寄せて総務部人事課へと向かった。

「おはようございます」

そう、声をかけたのは人事で長いこと勤めているベテランで主任の寺川さん。
40代の主任は高校生と中学生のお子さんのママでバリキャリである。

「あら、金山さんおはよう。なにか申請かしら?」

仕事の出来る寺川さんに尋ねられて、私は記入した書類のファイルを手渡した。
名前の変更届、給与口座の氏名変更と住んでる住所の変更届け等だ。
保険証等の切り替えのための手続きである。

ファイルを見て寺川さんは少し目を見開いたあと、小声で言った。

「おめでとう。これ、他に見つかると騒ぎになりそうだから、私が処理して課長に出すから安心なさい」

さすがは人事のベテランの寺川主任だ。
朝イチなら頼みやすいと思って早めに来たのだ。

「そうして頂いていいですか?助かります」

「そのうちバレるだろうけど、すぐよりはマシでしょう?社内人気ナンバーワンだものね、彼」

届出の夫の欄を見て寺川さんはクスッと笑う。

そう、悠斗さんは秘書室長補佐であの容姿だ。
専務も麻里花と結婚した今、悠斗さんは社内で結婚したい男性ナンバーワンなのだ。

告白する子や、話題になってるのはチラホラ耳にするくらいなので……。

結婚したのが入社二年目の小娘と知れ渡れば、女子社員の標的になりそうだ。
今から若干憂鬱だが、これも悠斗さんが凄い男性ゆえだろう。
仕方ないと腹はくくっているのだった。