きゅっと口を結ぶあたしに、淳太君は告げる。
「お前、ぼけーっとしてるだけなら、またあのおっさんに怒られるぞ。
現場のスタッフの声とか客の評判とか聞いて、どこを改善するかとかちゃんと考えろよ」
……え?
「赤木のおっさんや俺なんかより、お前のほうが頭いいんだからな。
自信持てよ、東大生」
あたしはぽかーんと淳太君を見ていた。
その場に立ち止まって。
この人はあたしを褒めようとしているのか、それとも貶そうとしているのか。
だけどいずれにせよ、東大生と言われてこんなに嬉しかったことはない。
そして、胸がドキドキしたこともない。



