緑色のピッチを走る柊君は米粒みたいに小さくて、はっきりとは見えなかった。

それでもモニターに柊君が映るたび、ドキドキした。

ただ、ドキドキはドキドキでも、胸が甘く苦しくなるそれではない。

単純にかっこよくて、すごいなぁと思うだけだ。





柊君が左足からの豪速シュートを決めると、スタジアムが沸く。

あたしも一緒に歓声を上げていた。

そんなあたしは、柊君を見ながら、淳太君のことを考えていた。





淳太君も柊君みたいに正義の味方だったら、あたしはこうも苦しまなくて済んだのかもしれない。

だけど、悪役の淳太君を好きになってしまったのは他ならぬあたしだ。

あたしを下僕としか見ていない淳太君との恋路は、きっといばらの道だろう。

それでも淳太君でなければいけないと強く思った。