「離して」
苦し紛れに吐き出すと、
「身体は離せなんて言ってない」
低く甘い声で耳元で囁かれ、背筋がゾクッとする。
「なぁ、桃華」
初めて呼ばれたその名前に、胸の奥がきゅんと甘い音を立てる。
まるで自分でないかのようにあたしの身体は制御不能で、淳太君の一挙一動にどんどん溺れていく。
淳太君が危険なことは重重承知だ。
今すぐに突き飛ばして逃げるべきだと分かっているのに。
「晴哉のものになんてなるなよ」
「淳太君のものには絶対ならない」
苦し紛れにそう吐いたあたしの唇に、おもむろに唇が重ねられる。
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