「…俺、が、…良かったんだよ…」

ぽつり呟いた言葉は、もう彼には届かない。
誰にも届けられない。

昔から、あまり感情を外に出す事が得意じゃなくて、それで沢山損をして来た。
親は、あたしの感情の真意が何処にあるのか量れずに、何時の間にか腫れ物にでも触るように接するようになったし、こんな性格だから勿論友達の範囲も狭い。

それでも…こんなあたしを好きだって言ってくれたのは、彼の方だったんだけど…。

「言えるわけないじゃん。あたしだけ見てとか…そんなの、重い、だけじゃん…」

一人の教室の中で、響く事もなく呟いては…悲しみの波に耐える。

そうだ。
あたしが、素直にならないのが悪いんだ。
もっと素直になれていたら…。
もっと、もっと、もっと…。

そう、思うだけ思ってから、あたしは溜息を一つ吐いて自分のクラスにカバンを取りに行こうと思った。