「つい、触りたくなっちゃうよね」



「…………」



謙が見ていることに気づいて、俺は何事もなかったかのようにそれをポケットに入れた。



「あの子、名前なんて言うのー?」



「……知らない」



「んー?二組の小森風花ちゃんかあ」




ああ、知らないは通用しなかった。



全学年の名簿はここにあるし、しかも没収品を書いたばかりだ。



「……興味、ある?」



「別に。あとはやっとけよ」



それだけ言って、二人を残して教室を出る。



そういえば謙、女好きだったな。
何か面倒なことにならなきゃいいけど……。