懐かしい、姉さんのケーキと紅茶の味。


あの家で食べるどんなものより美味しい。
僕にとってちゃんと味わうことができる、大切なもの。


「美味しかったよ、ありがとう」


「あ、もう帰るの?」


食べ終わってお会計をしようとした僕に、慌てて駆け寄ってくる姉さん。


「あー、うん」


「何か言いに来たんじゃないの?」


「んー、あ、このクッキーの箱も買う」


「え?あ、はいはい」


初めて来た時にお金はいらないって言われたけど、それは僕のプライドが許さないからちゃんとお金を払っている。

それを姉さんもわかってくれているから、払わせてくれている。