譲side


この世界は広くて、そしてとてつもなく不自由だ。


「譲様、おはようございます」


「………はよ」


目が覚めると、見慣れた高い天井。見慣れた顔ぶれ。


「お父様がお待ちですよ」


「はいはい………」


僕を表情ひとつ崩さず急かすのは、物心ついたときから僕に仕えている齋藤(55)。


小さい頃は着替えもお風呂もすべて齋藤と一緒だった。過保護にも程があると思うけど、この家に生まれた僕にはそれが普通のことだった。


流石に自分で身支度を整え、お父様が待つリビングに向かう。