王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う

 ーー『本当に美しい。……そのドレスの下も、さぞかし玉のように無垢な肌をなさっているのでしょう』


 耳元でねっとりと囁かれ、そのおぞましさにマリーは肩を震わせた。


 ーー『私の妻の座を狙っているのなら、肌の相性というものもあることを知っておいていただいたほうが良い。
 まだそういったことをご存知ないのなら、今宵、厚く手ほどきしても構いませんよ?』


 腰に回されたフレイザーの掌。

 生理的に受け付けない気持ちの悪さが、薄く笑う彼の手を伝ってマリーの身体を撫でたようだった。


 あのいやらしげな暗い瞳を思い出し、マリーはふるりと背筋を震わせる。


「マリー?」

「えっと、その……」

「大丈夫? 顔色が悪い。屋敷に戻って休んだほうが……」

「ううん、平気よ」


 覗き込んでくるウィルに心配をかけさせまいと、マリーは微笑みを返す。

 けれど、ウィルに黙っておくのも隠し事をしているような気がして、マリーは正直に伝えることにした。