王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う

 煌びやかな大広間に響く楽団の優雅な演奏。

 ダンスは小さなころからしっかりと教えられてきたけれど、初めての公の場でも緊張せずにステップを踏めているのは、リードしてくれているウィルのおかげだ。

 立派な騎士になるために剣術の稽古に明け暮れていたはずのウィルは、驚くほどダンスに手練れているようだった。

 大きな掌がマリーの腰に添えられ、剣術で鍛えられたたくましい腕にマリーはそっと手を預ける。

 ただ眺めていた華やかな社交界の世界に、自分も溶け込めていることがとてもうれしかった。

 なにより、自分を孤独から救い出してくれた彼の存在が、マリーの心をときめきで溢れ返らせていた。