アンダーソン邸は、マリーの屋敷とは比べ物にならないほど大きくて豪勢だ。

 広く長い回廊を行く間にも、シャンデリアはいくつ下がっていただろうか。

 壁にはマリーの屋敷では施せないような装飾が絢爛さを醸していて、アンダーソン家が裕福で、権力があるのだと実感させられた。

 厳かな雰囲気の中を進み到着したのは、天井の高い荘厳な広間。

 眩しささえ感じるほどにきらきらときらめくシャンデリアが、大勢の招待客を見下ろしていた。

 大理石のフロアは、装飾品と見紛うほどに着飾った貴婦人達がひしめく。

 想像していたよりもうんと豪華絢爛な様子に、マリーは息を飲んだ。

 ウィルが教えてくれたあの流星群の夜と同じ。

 初めての世界を知るあの瞬間の、胸が沸き立つような感覚だ。


「マリーアンジュ!」


 足を止めぼうっとしていたマリーを母の尖った声が呼びつける。

 はっと目を覚まして、目の前の厳しい現実を見せつけるような母の眼差しに慌てて駆け寄った。