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 馬車のカーテンの隙間から見えたのは、教科書に載っていたバークレー国の中でも大きな街タリナだ。

 赤茶の三角屋根が載っている白壁の建物が並ぶ街並み。

 初めて見る外の世界に軽く胸を弾ませながらも、気分はあまり良くない。

 生まれて初めての馬車はガタガタと上下左右に揺れ、クッションを敷いていても乗り心地は最悪だ。

 それに、馬車の揺れと相まってマリーの憂鬱さに拍車をかけていたのは、母の言いつけだった。

 街の中心地にあるアンダーソン邸。

 左右に果てなく続いているような白い石塀の真ん中に到着した。

 門兵が守る立派な鉄格子の門扉の前に、マリーは両親とともに降り立つ。

 唯一敷地内へと入ることができるそこから望むのは、夜空で瞬く星よりも威圧的で明々と照らされた広い前庭。

 中央に大きな噴水を構え、そこを左右対称に回りこむ石畳が、綺麗な芝生を分けながら遥か奥の豪勢な屋敷へと続いていた。