「でも、もしウィルと一緒に行けたなら、もっと楽しめそうなのにね」


 本を広げて、豊かな大地の温かさや流れる川の感触を教えてくれたように。

 いつか、満天の星の下で星座を教えると約束してくれたように。

 新しい世界は、ウィルと一緒に見ていきたいとマリーは思う。

 ウィルに笑みを返すエメラルドの瞳は、それまでの少女の雰囲気を残しながらも、見たことのない淑女の片鱗を覗かせた。


「俺は卑怯だな」


 マリーの純粋な眼差しを受けたウィルは、ふっと表情を崩す。

 そして、今一度手中の少女を強く抱き寄せた。


「心の隅にだなんて、そんな謙遜はただの偽善だ。
 本当は、そんな風に思ってなんかいないんだ」