マリーが新しい世界に心を奪われてしまうであろうことを、ウィルはわかっているのだ。

 見たことのない世界が胸を弾ませるものだというのは、マリー自身でもたやすく想像できる。

 彼が感じているように、素晴らしい世界はウィルの存在をマリーの頭から押し退けてしまうかもしれない。

 けれど、マリーにそうやって好奇心を芽生えさせてくれたのは、他でもないウィルだ。


「ウィル……」


 マリーは気恥ずかしさを押し止め顔を上げた。


「ウィルが助言してくれなかったら、今度の社交界も、新しい世界を見ることも、楽しもうとは思えなかったかもしれない。
 貴方が言ったように、今回は新しい世界を見に、社会勉強を楽しんでくるわ」

 
 彼がいなければ、マリーはわくわくするような興奮を味わうことすらなかったかもしれない。

 自分にとって、ウィルは決してないがしろにできる人ではない。

 心の隅どころではなく、彼はマリーの価値観を変えてくれた特別な存在なのだ。