王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う

「どんな人達が、どんな繋がりを持っているのか。見ていると意外に面白いかもしれないよ?
 例えば、そうだな。恐らく、フレイザー公に気に入られようとする女性は多いはずだ。そんな女性を見渡してみるのもいいかもしれないね。どんな声で、どんな風に接しているのか。
 女性の所作に限らず、集まる貴族たちの関わり方とか、教科書には載っていないようなことがたくさん見られるはずだ」


 自分の知らない世界を見るための、社会勉強。

 そう思えば、マリーの心は少しばかり好奇心に疼くようだ。

 それに、自分の屋敷よりも外の世界に足を踏み出すのは、その社交パーティーが初めてのことになる。


「ウィルの言う通りだわ。
 私にはまだ見たことのない景色がたくさんあるんだもの。本にも載っていない世界を見てみたい」


 自分の知らない世界で知らなかったことを見つけていくうちに、いつか大切だと思える人に出逢えたら……


 見えない未来を想像してみると、そこにふんわりと浮かび上がったひとりの男性。

 マリーを知らない世界に連れ出してくれるウィルの姿に、胸が大きく鼓動した。