マリーと意気投合するエルノアが、今もなお王城へ出入りできるのは、マリーからの申し出だった。

 フレイザーの爵位剥奪を言い渡してから、アンダーソン家の屋敷は抵当に入り、一家はそこを追われることになった。

 かつては王族に次ぐ権力を持っていた彼らは、それまでの生活を捨てきれず、次の居住先をなかなか見つけられずにいた。

 それを見かねたウィルが国王に嘆願し、国境近くにあるあまり使わない別荘を与えたのだった。

 人里離れた湖畔のそばにある別荘は、最低限の生活に困らないものは備えられてはいたが、残された雀の涙ほどの財産でアンダーソン家四人の生涯を支えなければならなくなった。


「フレイザー様は、お元気ですか?」

「ええ、病気などはないのだけれど、何もかもを失ってしまってから、今も心ここにあらずで……毎日ただぼんやりと窓の外を眺めて過ごしていらっしゃるわ」

「そう……」


 兄の犯した罪に巻き込まれる形になってしまったエルノア。

 マリーも彼女に同情し、ウィル以外の友人がいなかったこともあり、冷たい態度を取られたことなどなかったかのように、今は一番親しい間柄になった。