王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う

 隣の彼をちらと上目遣いに見上げると、国王のそれよりももっと優しくて慈しみを感じるほどの眼差しに受け止められる。

 きゅうっと音を立てる胸。

 国王を前にしての緊張と不安を、彼が全て包み込んでくれているようだ。

 そして、マリーは心を整えてから国王へと向き直った。


「ウィリアム殿下とは、四年前の春。うららかな午後の裏庭で出逢いました。
 初めて父以外の男性を目の当たりにしたのが、殿下でした」


 静かに話を聞いてくれる国王と王妃を前に、マリーはあのときの情景を鮮明に思い出した。

 初めての異性なのにもかかわらず、彼の爽やかな雰囲気と見目麗しい出で立ちに目を奪われた。

 マリーはウィルのことを語りながら、その瞬間すでに心を奪われていたのだと今さらながらに思った。

 狭い世界でしか生きてこなかったマリーに、世の中にある色んな物事を教えてくれて、彼の話はマリーにとって何よりの生きる楽しみになっていた。

 そして他の誰かでは、きっとそんなふうに心を惹かれなかったかもしれないと、心から思う。