「ウィリアム様には、私が直々に剣術を教授しております。生まれながらの才をお持ちなので、これまで見てきた誰よりも、我が君主の腕は確かだと自負しております。
 ですので、殿下を信じて……さあこちらへ」

「マリー……!」


 すぐそばでウィルもまた離れることを急かした。

 マリーを手にかけるにしても、フレイザーはウィルへの圧を解けない。

 マリーは、歯を食いしばるウィルを見てようやく気がついた。

 あれだけ剣さばきに手練れたウィルが防戦一方なのは、……自分がそばにいるせいだと。

 マリーを守りながらの不利な状況では、ウィルの力は出し切れないのだ。

 均衡を崩せないふたりのそばから、マリーは素早く駆け出した。

 マリーが離れた途端、背後で再び剣の競る音が甲高く鳴り響く。

 ミケルに抱きとめられながらも、マリーは金の髪を乱してウィルへと振り返った。