「マリー、俺を守るためにそうするのだとしても、どちらにしろフレイザーの目的を助長するにすぎない。こいつの目的は……この国の王権を奪うことだ」

「さすがは次期国王陛下殿、聡明な観察眼で私の動向を探っておられましたか」


 さらに押し潰すように力を加えるフレイザーに、ウィルがギリと歯を食いしばった。


「ウィリアム様!!」


 声に振り返るマリーが見たのはミケルの姿だ。

 険しい表情を見受けながらも、頼もしい人の参上に安堵が溢れる。


「ミケルさん……っ」

「動くなよ? ミケル。あと少し力を加えればこの貧弱な玩具はへし折れ、貴様の君主の身体は私の剣で真っ二つだ」


 フレイザーもまた、ウィルから目を逸らすことなく、救世主をも威圧的な声で制する。


「マリー、……ミケルの元へ、早く……!」

「マリーアンジュ様! こちらへ!」


 ウィルのそばから離れろと言われるも、いやいやと金色の髪を揺らすマリー。

 自分を守ってくれている彼から離れたくない。


「大丈夫でございます、マリーアンジュ様」


 すると、ミケルがマリーに優しく呼びかけてきた。