「すまないが、俺は何度も君とは結婚はしないと告げてきた」

「わたくしは、貴方のこと心から……」

「君には、君のことをもっと想ってくれている男性がいるはずだ。
 ……オネット侯爵の子息、ライアンとはずいぶん親密な仲だそうだな。彼なら俺もよく知っている。切磋琢磨して騎士道を共に学んだ同志だからな」


 ウィルの言葉を聞いて、エルノアの顔色が一気に青く変わった。


「し、知らないわ……そんな人……」

「彼の気持ちをわかっていてそう言っているのなら、君には失望を禁じ得ない。
 俺の大切な友人を弄ぶような真似は、金輪際やめていただきたい」


 怯えるようにかぶりを振り、明らかに動揺している様子のエルノア。

 涙目のエルノアが足を崩そうとしたところで、後ろから彼女を支える人影が現れた。