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「マリーアンジュ、喜びなさい。アンダーソン大公爵家より、直々に社交界へのお呼びの声が掛かったわ」
母は帰宅するなり、ぎらぎらとしたシャンデリアのぶら下がる部屋にマリーを呼びつけた。
サロンへと出向いたアンダーソン家で、大公爵という最高爵位を受け継いだばかりの長子フレイザーから、娘をぜひ招待したいと申し出があったことを嬉々として話し出した。
「ようやく十六を迎えた貴女に、ぜひお目にかかりたいとお声かけを頂いたのよ!」
金の細工を施した高価なソファでくつろぐマリーの母は、エレンの淹れた紅茶をすすりながら満足げに言った。
母の嬉しそうな顔を見て、斜向かいに置かれる同じ装飾の椅子に腰掛けるマリーは、口元に薄らと笑みを含んだだけで、その喜びに同調することはできなかった。
ああ、ついにこのときが来てしまったわ……
思わず吐きそうになる溜め息は、紅茶と一緒に飲み干した。
「マリーアンジュ、喜びなさい。アンダーソン大公爵家より、直々に社交界へのお呼びの声が掛かったわ」
母は帰宅するなり、ぎらぎらとしたシャンデリアのぶら下がる部屋にマリーを呼びつけた。
サロンへと出向いたアンダーソン家で、大公爵という最高爵位を受け継いだばかりの長子フレイザーから、娘をぜひ招待したいと申し出があったことを嬉々として話し出した。
「ようやく十六を迎えた貴女に、ぜひお目にかかりたいとお声かけを頂いたのよ!」
金の細工を施した高価なソファでくつろぐマリーの母は、エレンの淹れた紅茶をすすりながら満足げに言った。
母の嬉しそうな顔を見て、斜向かいに置かれる同じ装飾の椅子に腰掛けるマリーは、口元に薄らと笑みを含んだだけで、その喜びに同調することはできなかった。
ああ、ついにこのときが来てしまったわ……
思わず吐きそうになる溜め息は、紅茶と一緒に飲み干した。
