けれど、騎士の彼とかち合った視線に、マリーはすぐに激しい罪悪感に苛まれる。

 両親を心配させ、騎士団にまでも手を取らせてしまった自分の素行を深く反省した。


「それなら、令嬢は私が保護したと伝えてくれ。これから送り届けると」


 ミケルが告げると、部下である彼は従順な返事をし、来た時と同様に素早く馬を走らせマリーの屋敷のある方へと去って行った。


「ミケルさん、すみません……ご迷惑をおかけしてしまって」


 再び馬の足を進めさせながら、ミケルはさっきまでの穏やかさを取り戻しマリーに振り向いてきた。


「令嬢も、何か事情があってこちらまで、……ウィリアム様の元までおいでになったのでしょう?」


 それだけを言い前を向くミケルの背中に、マリーはぐっと口唇を噛む。

 そっとウィルを見上げると、満天の星を背にした美しい瞳が自分を見つめ返してくれる。

 黒の前髪がさらりと夜風に揺れると、マリーはたしかな気持ちを胸に抱いて口を開いた。