「イベール家にはすでに顔見せしていたのか? ウィリアム」
ふたりの話を聞いていたフレイザーが、初めて焦りを隠したような口振りで割り込んできた。
「貴様に話すことではない」
刺々しく返すウィルに、マリーはそわそわとしてしまうものの、王太子であればフレイザーへの物言いは相応のものなのだろう。
それ以上の話は無用だとでもいうように、ウィルは手当を終えたマリーをひょいと横抱きにする。
突然のことに小さな悲鳴を上げて、マリーは彼の首元に掴まる。
ウィルはそのまま、立ちはだかるフレイザーを避けて行こうとした。
「ふん、まあいい。その話を聞く限りでは、身分はまだ明かしてはいないようだな。それに……」
ふたりが通りすがる瞬間、フレイザーは暗黒の瞳を細めて言った。
「マリーアンジュ、君を私の婚約者として、王太子成人の祝賀パーティーに出席いただくよう、イベール家に書信を出した。今ごろ、私からの書信にイベール家は歓喜に沸いていることだろう」
ふたりの話を聞いていたフレイザーが、初めて焦りを隠したような口振りで割り込んできた。
「貴様に話すことではない」
刺々しく返すウィルに、マリーはそわそわとしてしまうものの、王太子であればフレイザーへの物言いは相応のものなのだろう。
それ以上の話は無用だとでもいうように、ウィルは手当を終えたマリーをひょいと横抱きにする。
突然のことに小さな悲鳴を上げて、マリーは彼の首元に掴まる。
ウィルはそのまま、立ちはだかるフレイザーを避けて行こうとした。
「ふん、まあいい。その話を聞く限りでは、身分はまだ明かしてはいないようだな。それに……」
ふたりが通りすがる瞬間、フレイザーは暗黒の瞳を細めて言った。
「マリーアンジュ、君を私の婚約者として、王太子成人の祝賀パーティーに出席いただくよう、イベール家に書信を出した。今ごろ、私からの書信にイベール家は歓喜に沸いていることだろう」
