そんな考えに押し潰されそうになるマリーの心に、再び唯一未来への光を挿してくれる人の姿が戻ってくる。

 今ここにはいないサファイアの瞳を持つ彼。

 マリーは、ウィルの姿を求めるように顔を上げた。

 視界に彼の姿はなく、ちくりとした胸の痛みを感じたけれど、マリーはその場ですっくと立ち上がった。


 ……せっかく気づいたこの気持ちを、ないがしろにしたくない。


 立ち上がったマリーを、眩しい太陽が明るく照らしてくれる。

 失くすことを想像し悲観ばかりしていても、状況が好転するわけじゃない。

 例え、このままアンダーソン家へ嫁ぐことになってしまったとしても、心までは誰の言いなりにもならない。

 ウィルを想う気持ちが原動力となり、マリーの足を前へと踏み出させる。
 
 せめて自分の中に生まれた想いだけは、彼の元へ届けたい。

 
 ――『愛しているよ、マリー』


 あの言葉に返事をしていないことに気づいたマリーは、いつも彼が顔を覗かせる生け垣の隙間から、外の世界へと抜け出した。



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