「寝た?」


「まだ」


秒針の音をさえぎり、彼が耳元で囁いた。


低音の甘い声が右耳の鼓膜に心地よく響く。


私は彼に背を向けて寝ているので、彼の動きはよくわからない。


夏の暑さが近づく6月半ば。


ブランケット1枚ですら暑く感じられた。


カーテンを閉めた窓は開け放され、時々風でカーテンが揺れる音が聞こえる。


「眠れない?」


「うん」


 昼間、互いの家でデートするときに、ベッドに寝転がって添い寝することは何度かあったが、夜、こうやって寄り添って寝るのは今日が初めてだった。