お手洗いで顔を洗う。学校帰りだから、たいしたメイクはしていなかったので、気にしないでずぶ濡れにした。



ハンカチで顔を拭けば、落ちたBBクリームがたっぷりつく。そんなことにもイヤになる。



芳香剤のにおいがあたしを包み込んでいて、ウソくさい花の香りがきつかった。



「……はあ、もう帰ろっかな……」



正直、今はあんまりサエとカンナを見ていたくない。

サエもカンナも良い子で、あたしを慰めようと今日カラオケに連れてきてくれた。

ポテトだって、奢ってくれた。



ストレス発散だって、好きなだけ歌えって言われたから、あたしは思いっきり叫べるやつをたくさん歌った。



でも、やっぱムリ。



だってすごくすごく辛い。何の歌の歌詞を見ても、彼のこと思い出しちゃうんだもん。



あたしが小さいときに見ていた、プリキュアのオープニングを歌っていても思い出すから、ダメだった。



二人には悪いけど、先に帰らせてもらおう……。



そう思って、トイレから出る。



――そのとき。



「いって!」

「きゃあ!」



開けた扉が、誰かに思いっきりぶつかってしまった。