誰も知らない彼女

やはりこうなることを予想していなかったらしい。


えるといっちゃんも数歩あとずさる。


「……ほ、ほんとにマズいね。ああなっちゃった朝丘さんを止める方法が思いつかないよ……」


「ゆ、由良と秋帆があんなにびっくりしてる姿、はじめて見た。ふたりがびっくりするくらいの反応を見せるなんて……」


えるといっちゃんがそうつぶやいたと同時に他の生徒の様子を見てみるが、やはりみんなは私たちと同じ反応を見せていた。


いっちゃんの言うとおり、由良と秋帆がびっくりするくらいの反応を見せる今日の若葉はおかしい。おかしすぎる。


とてもと言ってもいいくらいに精神が不安定になっている。


「もうダメぇぇぇぇぇーっ‼︎ みんなの顔見るだけで私はもう死ぬぅぅぅぅ‼︎ あっ、やっ、やだ、やだやだやだやだやめてぇぇぇぇ‼︎」


目を見開いて絶叫する若葉は鬼より怖い。


そんな若葉の声に、先ほどの先生が目を丸くして駆け込んできた。


「な、なに⁉︎ いったいなにがあったの⁉︎」


この状況をいまだにわからない先生に説明しようとする者は誰もいない。


なので先生は疑問符を頭上に浮かべたような表情をしている。


だが、若葉が由良と秋帆の前で暴れているところを見て、少しだけ理解したらしい。