誰も知らない彼女

そもそもふたりは短気なほうだから、ちょっとしたことで機嫌が悪くなるのだ。


だが、そんなふたりなどおかまいなしに、若葉が言葉を続ける。


「ゔぅ、ダメだダメだダメだダメ‼︎ 私はもう生きられないぃぃぃ‼︎ 八戸さんと高島さんだけじゃなくて他のみんなの顔なんてもう絶対に見たくないぃぃぃぃ‼︎ ぎゃあぁぁぁぁ‼︎」


自分たちがいくら言葉を放ってもまったく聞く耳を持たない若葉に、さすがのふたりも動揺する。


「え……私たちが言葉責めしても逆効果って、朝丘がさらにやばくなってるってこと?」


「マズいよ、由良。朝丘がマジで狂ってる。力の強い誰かにおさえておいたほうがいいんじゃない?」


ふたりが若干引いた様子で若葉から少し距離を置いた。


しかも、ふたりが普段言うはずのない言葉が聞こえてきた。


ふたりが若葉のことをこんなにも恐れている姿を見せるのはめずらしい。


ふたりの言うとおり、若葉はさらにやばい状態に陥っており、人が変わったように狂っている。


あまりの若葉の変わりように、思わずネネに話しかけてしまう。


「ね、ねぇ、ネネちゃん。この状況……本当にやばくない? どうしたらいい?」


ネネは少しだけ目を丸くしながらも、私の問いかけに答えた。


「うーん……正直私もこうなると思ってなかったから、どうすればいいのかわからないよ……。この状況がマジでやばいのは同意見だけど」