彼女たちは心配そうな顔で私を見た。


「大丈夫? 朝丘さんになんかされてない?」


「あんなクズ人間のことなんて気にしなくていいよ?」


眉をハの字にして、若葉が触れた私の体をパタパタと払いはじめる彼女たち。


そんなことをする必要はないと言おうとしたが、若葉を嫌っている彼女たちの前では言えない。


怖いからではなく、ただ若葉の弱っている姿を見たいというクラス全員の思いが私の抱いている思いにかなわないだけ。


若葉を苦しめるべきだと思っている生徒が圧倒的に多く、私のようにべつに苦しめるべきではないと思っている生徒はほとんどいない。


その中で反論するには勇気が必要なのだ。


とりあえず彼女たちに笑顔を見せる。


「心配してくれてありがとう。私は朝丘さんのこと気にしてないよ」


私がそう言うと、向こうから見覚えのある生徒がこちらに駆け寄ってきた。


「抹里ちゃーん!」


ネネだ。


右手を大きく振りながら走り寄っている。


だが、いつも一緒にいる秋帆の姿がない。


きっと秋帆は由良と一緒にどこかにいるのだろう。


周りにいる子たちもそう思ったのか、誰も秋帆のことについて質問しなかった。