誰も知らない彼女


【ネネside】

クリスマスが過ぎて、冬休みに入った。


私は今、抹里ちゃんが入院しているという病院に向かっていた。


連続殺人事件の犯人が死んだと知らされたあと、抹里ちゃんは私に向かって怒鳴り声をあげた。


『来るなよ‼︎』


顔なんて見えなかったけど、きっと真っ赤にして鬼の形相をしていたことだろう。


自分の家から私を追い払い、誰とも接さなくなり、学校にも来なくなった。


『榎本はな、崖から飛び降りて自殺を図ったが失敗して、隣街の病院で入院している』


担任の先生から聞いた話をもとに、ルーズリーフで抹里ちゃんが入院しているという病室をしっかりとメモした。


そのメモはちゃんと私の手の中にある。


手の中にあるメモをチラッと見て視線を前に向けて歩いていると、数十メートル先にあるバス停を見つけた。


そこに一台のバスが停止しており、滑って転ばないように急いで向かう。


無事バスに乗り込んでしばらく揺られ、目的地の病院近くのバス停で降りる。


病院は私が住む街には存在しない。


だから隣街まで行かないと病院はないのだ。


目の前に映った病院の大きさに驚いて立ち止まりそうになるが、それを我慢して病院の中に入る。


今日は平日なのにずいぶんと出入りが激しい。


その様子に驚きながらも、受付にいる女性に抹里ちゃんの病室を尋ねる。


「あの、すみません」


「はい、なんでしょうか」


「こちらの病院に榎本抹里ちゃんが入院していると聞きましたが、彼女がいる病室を教えてくれませんか?」