誰も知らない彼女


☆☆☆

ピチャーン……。


しまりきっていない蛇口から水がそんな音を立ててどこかに落ちる。


水が落ちたと同時にパチッと目を覚ます。


あれ……?


ここはどこ?


さっきまで私は病室から飛び降りて、アスファルトに叩きつけられていたはずなのに。


それに、着ている服も病院にいるときとは違った服装だ。


病院で着ていた服とは繊維があきらかに違う真っ白な服。


シミや汚れがまったく見あたらず、破れた跡やほころびもないその服に少し震えた。


それよりも、なんで私はここにいるの?


服装よりも気になるのは、やはりなぜ私がここにいるのかということ。


窓から飛び降りて、全身をアスファルトで打たれたのなら、死ぬ確率が高かったはず。


どうして……?


体を起こして立ちあがろうとするが、ズキンッと頭に岩がのしかかったような痛みが走った。


思わず片目をつぶって頭をおさえていると、どこからか靴音が聞こえてきた。


それに対してあまり驚かなかった。


だってそれは、意識を手放す前に聞こえた靴音とまったく同じだったから。


そちらのほうに目を向けると、不気味に笑う黒ずくめの男が視界に現れた。


もちろんその人物を知っているわけじゃないし、顔見知りというわけでもない。